どうも、ジサ郎です。
Ryzen 5 4650Gは、Zen 2アーキテクチャを採用した「Renoir」世代のAPUとして2020年に登場しました。
6コア12スレッド構成とRadeon Vega 7内蔵GPUを組み合わせることで、CPUとGPUの両面において高いコストパフォーマンスを発揮します。
当初はOEM向け専用モデルとして提供され、自作市場では入手が難しいCPUでしたが、その性能とバランスの良さから高い注目を集めました。
従来のRyzen 3000Gシリーズから大きく進化し、処理性能の向上に加え、内蔵GPUも動作クロックが強化され、マルチメディア処理やライトゲーミングが快適に行えるようになっています。省スペースPCやコスト重視のシステム構築に最適なこのAPUは、幅広いユーザーにとって魅力的な選択肢となります。
この記事では、Ryzen 5 4650Gの特徴や性能、搭載機能、相性問題について徹底的に解説していきます。
概要
Ryzen 5 4650Gは、AMDが2020年7月に投入した「Ryzen PRO 4000G」シリーズの一つで、Zen 2アーキテクチャを採用した「Renoir」世代のAPUです。6コア12スレッド構成を備え、7nmプロセスによる電力効率の改善と高い処理性能を兼ね備えています。
従来のRyzen 3000Gシリーズ(Zen+世代)から大きく進化し、シングル・マルチ両面でのパフォーマンス向上が実現しました。
GPUにはRadeon Vega 7を統合しており、最大1.9GHzで動作することで動画再生や軽量な3Dゲームを外部グラフィックボードなしで快適にこなせます。これにより、省スペースPCや低コスト構成において高い実用性を発揮しました。
ただし、Ryzen 5 4650Gは当初OEM向けに限定されたモデルであり、メーカー製PCや法人向けPCに搭載されるケースが中心でした。
そのため、自作市場では入手が難しく「隠れた実力派APU」として認知されることになります。AM4ソケットとPCIe 3.0に対応しているため既存環境でも活用しやすく、コストと性能を両立させたいユーザーにとって魅力的な選択肢となりました。
スペック表
項目 | 内容 |
---|---|
アーキテクチャ | Zen 2 + Vega iGPU(Renoir世代) |
コア数 | 6コア |
スレッド数 | 12スレッド |
ベースクロック | 3.7 GHz |
最大ブーストクロック | 最大 4.2 GHz |
L1キャッシュ(命令用) | 32KB × 6コア = 192KB |
L1キャッシュ(データ用) | 32KB × 6コア = 192KB |
L2キャッシュ | 512 KB × 6コア = 3 MB |
L3キャッシュ(CCD単位) | 8 MB |
3D V-Cache容量 | 搭載なし |
合計L3キャッシュ容量 | 8 MB |
TDP | 65 W |
対応ソケット | AM4 |
内蔵GPU | Radeon Vega 7(7CU、最大 1.9 GHz) |
- L1キャッシュの総容量は、384KB(命令用192KB+データ用192KB)。命令用とデータ用は各コア専用で、合計値は全6コアの総和。
- L3キャッシュ(CCD単位)は、モノリシックCCD構造で8MBが搭載されています。
- 3D V-Cache容量は、X3Dモデル専用のため非搭載です。
搭載されている機能
Ryzen 5 4650Gは、Zen 2アーキテクチャを採用したRenoir世代のAPUとして、CPUとGPUの両面でバランスの取れた機能を備えています。
6コア12スレッド構成による堅実な処理性能に加え、内蔵GPU「Radeon Vega 7」を搭載することで、外部グラフィックボードがなくても快適な動画再生やライトゲーミングを実現可能です。
さらにPrecision Boost 2やPBO、Pure Power、Eco ModeといったAMD独自の制御技術を備え、省電力性と性能を高次元で両立しています。
本章では、Ryzen 5 4650Gに搭載されている主要な機能について解説していきます。
Simultaneous Multi-Threading(SMT)搭載
Ryzen 5 4650Gは、AMDのSimultaneous Multi-Threading(SMT)技術に対応しており、1つの物理コアで2つのスレッドを同時処理できます。これにより6コア構成の4650Gは12スレッドを扱うことができ、効率的な並列処理が可能となります。
動画編集やプログラミング、複数アプリの同時実行といったマルチタスク環境で強みを発揮し、コストを抑えたAPUながらも上位クラスに迫る処理能力を実現します。日常用途からクリエイティブ作業まで幅広く活躍できる点が、4650Gの大きな魅力のひとつです。
Precision Boost 2(PB2)搭載
Ryzen 5 4650Gは、自動クロック制御機能「Precision Boost 2(PB2)」を搭載しています。CPUの温度や電力、負荷状況をリアルタイムで監視し、必要に応じてクロック周波数を自動で引き上げます。
従来のブースト機能より柔軟性が高く、シングルスレッド処理からマルチスレッド処理までバランス良く性能を発揮できるのが特長です。ユーザーが特別な設定を行わなくても恩恵を受けられるため、ゲームからビジネス用途、クリエイティブ作業まで幅広いシーンで快適な動作を実現します。
Precision Boost Overdrive(PBO)搭載
Ryzen 5 4650Gは、PB2を拡張した「Precision Boost Overdrive(PBO)」にも対応しています。これは、冷却性能やマザーボードの電力供給に余裕がある場合、標準のブーストクロックを超えて自動的に性能を引き上げる機能です。
従来の手動オーバークロックと違い、システム環境に応じて自律的に動作するため、安定性と高性能を両立できる点が魅力です。高品質な電源や冷却を組み合わせれば、4650Gの処理能力をさらに引き出すことが可能で、コストを抑えつつ性能を追求するユーザーに適しています。
Pure Power 搭載
Ryzen 5 4650Gは、省電力制御技術である「Pure Power」を搭載しています。CPU内部に組み込まれた数百のセンサーが、電圧・温度・負荷状況をリアルタイムで監視し、最適な電力供給を行う仕組みです。
これにより無駄な消費電力を抑え、発熱を軽減しながら必要な性能はしっかり確保できます。ユーザーが特別な設定を行わなくても常時機能するため、安定性と効率性を両立できるのが特徴です。静音性や省エネ性を重視するPC構築において有効であり、日常用途からビジネス用途まで幅広い環境で安心して利用できます。
Eco Mode(省電力モード)対応
Ryzen 5 4650Gは「Eco Mode(省電力モード)」に対応しており、標準のTDP 65Wを45W相当に抑えて運用することができます。
AMD公式ツール「Ryzen Master」やBIOSから簡単に切り替えることができ、省電力性や静音性を重視するユーザーにとって便利な機能です。
性能は若干低下しますが、発熱や消費電力の削減により安定性が向上し、省スペースPCや長時間稼働させる環境に適しています。高い性能と柔軟な省電力機能を兼ね備えている点は、4650Gの大きな魅力のひとつといえるでしょう。
Unlocked仕様(倍率ロックフリー)
Ryzen 5 4650Gは「Unlocked仕様」を採用しており、クロック倍率がロックされていないためオーバークロックが可能です。これにより、ユーザーはBIOS設定やAMD公式ツール「Ryzen Master」を用いて自由にクロックを調整でき、標準設定を超えた性能を引き出すことができます。
もっとも、PB2やPBOといった自動制御機能が優秀なため、定格のままでも十分なパフォーマンスを発揮します。とはいえ、冷却環境や電源供給に余裕を持たせれば、さらなるチューニングも可能であり、自作ユーザーにとってカスタマイズ性の高さを楽しめる大きな魅力となっています。
AVX2 / FMA3 命令セット対応
Ryzen 5 4650Gは、最新の演算拡張命令セットであるAVX2およびFMA3に対応しています。AVX2は256bit幅のSIMD命令により、大規模データを効率的に並列処理でき、画像処理やデータ解析、暗号処理といった高負荷タスクで効果を発揮します。
一方、FMA3(Fused Multiply-Add)は掛け算と足し算を1命令で実行できるため、動画エンコードや科学技術シミュレーションなど浮動小数点演算を多用する分野で性能を引き上げます。これらの命令セットを活用することで、Ryzen 5 4650Gは日常用途を超えた高度な計算処理に対応できる実用性を備えています。
AMD StoreMI Technology 対応
Ryzen 5 4650Gは、AMD独自のストレージ高速化技術「StoreMI」に対応しています。これはSSDとHDDを組み合わせて1つの仮想ドライブとして扱い、SSDをキャッシュとして利用することでアクセス速度を大幅に向上させる仕組みです。
頻繁に利用するアプリやデータは自動的にSSD側へ配置されるため、ユーザーは意識することなく快適なレスポンスを体感できます。大容量HDDのコストパフォーマンスとSSDの速度を両立できる点が魅力で、省スペースPCやコスト重視の構成においても効果的です。4650Gを採用したシステムでは、ストレージ環境をさらに快適にする有用な機能といえるでしょう。
Radeon Vega 7(iGPU)搭載
Ryzen 5 4650Gは、統合型グラフィックスとして「Radeon Vega 7」を内蔵しています。7基のCU(Compute Units)を備え、最大1.9GHzで動作するこのiGPUは、フルHD解像度でのライトゲーミングや動画編集、マルチメディア用途に十分な性能を発揮します。
外部グラフィックボードを搭載しなくても快適に動作するため、省スペースPCやコストを抑えた構成に最適です。また、DirectX 12やVulkanなど最新のAPIに対応し、ハードウェア動画デコード機能も備えているため、映像再生や複数ディスプレイ環境でも安定した動作を実現します。
発覚している相性の問題
Ryzen 5 4650Gは、OEM提供を中心に展開されたモデルで高い実用性を持ちますが、登場当初はいくつかの相性問題が指摘されました。
代表的なものとして、旧世代マザーボードでのBIOS未対応による起動不良や、DDR4高クロックメモリ利用時の不安定動作、付属クーラーでは十分に抑えきれない発熱問題、さらにドライバーやOS側の最適化不足による性能低下などがあります。
いずれもBIOS更新や安定したメモリ選定、冷却環境の改善、最新ドライバー導入といった対策によって解決可能です。
本章では、Ryzen 5 4650Gにおける相性問題とその対策を解説していきます。
マザーボードBIOSとの互換性
Ryzen 5 4650GはZen 2アーキテクチャを採用したAPUですが、発売当初はOEM向け専用モデルだったため、自作市場で利用する際にはマザーボードのBIOS互換性が大きな課題となりました。
主にB450やX470といった旧世代チップセット搭載マザーボードでは、初期BIOSがRyzen 4000Gシリーズに非対応であり、CPUを装着しても起動しない、あるいはiGPUを正しく認識しない事例が多く報告されました。
これはAGESAコードの更新不足による互換性の問題が原因であり、BIOSを最新版にアップデートすることで解決できます。
ただしBIOS更新には対応CPUが必要なケースもあるため、事前に販売店やメーカーサイトで「Ryzen 4000Gシリーズ対応済み」の明記を確認することが重要です。
安定して運用したい場合は、Ryzen 4000Gシリーズ対応が保証されたB550やX570チップセットを搭載したマザーボードを選択するのが確実な対策といえます。
メモリ相性
Ryzen 5 4650Gは公式にDDR4-3200までをサポートしていますが、特に内蔵GPUを利用する場合、メモリ速度や相性が性能に直結します。
登場当初は高クロックメモリを組み合わせた際に、POSTエラーやシステムの不安定化、ブルースクリーンが発生するケースが散見されました。
これはマザーボード側のBIOS最適化不足やメモリICの特性によるものであり、安定動作を阻害する要因となります。対策としては、まずマザーボードのBIOSを最新に更新することが必須です。
そのうえで、メーカーが公開しているQVL(動作確認済みメモリリスト)に掲載されたモデルを選ぶと高い安定性を確保できます。
また、iGPU性能を引き出すためには必ずデュアルチャネル構成で運用することが推奨されます。安定性重視ならDDR4-3200、性能を求めるなら安定性が確認されたDDR4-3600を狙うとよいでしょう。
発熱と冷却環境
Ryzen 5 4650GはTDP 65W設計のCPUですが、CPU性能とiGPUを同時に高負荷で利用すると消費電力が80Wを超える場合があります。
そのため付属のWraith Stealthクーラーでは冷却が不十分となり、高負荷時に80度を超える温度に達してクロック低下を招く事例が確認されています。特にOEM採用モデルでは冷却設計に余裕がなく、サーマルスロットリングが発生しやすい傾向がありました。
対策としては、まずケース内のエアフローを改善し、可能であればミドルクラス以上の空冷クーラーや簡易水冷を導入することが効果的です。
さらに、Ryzen Masterを利用したEco Mode設定や軽度のアンダーボルティングを行えば、性能を大きく損なわずに温度と消費電力を抑えられます。長時間の安定稼働を目指すなら冷却環境の強化が実質的に必須といえるでしょう。
Windowsやソフトウェア側の最適化
Ryzen 5 4650GはAPUという特性上、ハードウェア性能だけでなくソフトウェアの最適化状況もパフォーマンスに直結します。
発売当初はOEM提供が中心だったため、Adrenalinドライバーの配布が限定され、内蔵GPUが十分に最適化されないケースがありました。その結果、描画性能が期待を下回る、あるいは特定アプリケーションで不具合が生じる問題が報告されています。
対策としては、AMD公式サイトから最新のチップセットドライバーおよびGPUドライバーを導入し、常に最新のWindows Updateを適用することが不可欠です。
また、電源プランを「Ryzen Balanced」に設定することで、スレッド割り当てやクロック制御が最適化され、CPUとGPUの両面で安定した動作を実現できます。
さらに、アプリケーションも最新バージョンを使用することでマルチスレッド最適化やGPUアクセラレーションが正しく働き、4650Gの性能を最大限引き出すことが可能です。
総まとめ
Ryzen 5 4650Gは、Zen 2アーキテクチャを採用した「Renoir」世代のAPUとして登場し、6コア12スレッドとRadeon Vega 7内蔵GPUを組み合わせた高いバランス性能を誇るモデルです。
シングル・マルチ処理の両立による優れた応答性と、省スペースPCや低コスト構成でも十分活躍できるiGPU性能により、コストパフォーマンスを重視するユーザーに強く支持されました。
当初はOEM向け提供が中心で自作市場では入手が難しかったものの、後に広がる認知とともに「隠れた実力派APU」として評価されるに至ります。
一方で、旧世代マザーボードでのBIOS非対応や高クロックメモリ使用時の不安定動作、冷却不足による温度上昇といった課題も確認されています。
しかし、最新BIOSの適用や適切なメモリ選定、冷却環境の強化によって安定した運用が可能です。また、AMD公式ドライバーやWindows側の最適化を行えば、CPUとGPUの両面で性能を十分に引き出せます。
Ryzen 5 4650Gは、グラボ不要で多用途に対応できるAPUとして、家庭用からビジネス用まで幅広く活躍できる存在です。
OEM由来の特異な立ち位置も含め、Zen 2世代を代表するコストパフォーマンス重視の選択肢といえるでしょう。