【徹底解説】Ryzen 5 3400Gとは?|Picasso世代を代表するコスパ重視のAPU

AMDのCPU

どうも、ジサ郎です。

Ryzen 5 3400Gは、Zen+アーキテクチャを採用した「Picasso」世代のAPUとして2019年に登場しました。4コア8スレッド構成のCPU性能と、統合グラフィックス「Radeon RX Vega 11」を組み合わせた点が特徴で、グラフィックボードを搭載しなくても一定のゲーミング性能や動画編集をこなせるのが大きな魅力です。

前世代のRyzen 5 2400Gからクロック向上やGPUの最適化が施され、省スペースPCやコストパフォーマンス重視の構成において高い実用性を発揮しました。TDP 65Wという扱いやすい消費電力設計もあって、自作初心者からライトユーザー、さらにはエントリー向けゲーミングPCを求める層にまで幅広く支持されています。

この記事では、Ryzen 5 3400Gの性能や機能、相性問題まで徹底的に解説していきます。

概要

Ryzen 5 3400Gは、AMDが2019年に投入した「Ryzen 3000G」シリーズの上位モデルであり、12nmプロセスのZen+アーキテクチャを採用した「Picasso」世代のAPUです。

4コア8スレッドの構成を備え、日常用途からライトなマルチタスクまで対応できる性能を発揮します。先代のRyzen 5 2400Gと比べてクロックが引き上げられ、シングルスレッド性能と応答性が向上しました。

内蔵GPUにはRadeon RX Vega 11を統合し、最大1.4GHzで動作することで当時のAPUとしては高い描画性能を誇りました。グラフィックボードを必要としない構成で、フルHD解像度でのライトゲーミングや映像編集、マルチメディア用途を快適にこなせる点が大きな魅力です。

さらにDDR4-2933メモリを公式サポートし、メモリ帯域を活かした内蔵GPU性能の強化も実現しました。AM4ソケットを採用しているため、幅広いマザーボードとの互換性があり、自作PCのエントリー構成や省スペースモデルに最適です。

Ryzen 5 3400Gは、当時のAPU市場において「コストを抑えつつGPU性能を備えた万能型CPU」として高く評価されました。

スペック表

項目内容
アーキテクチャZen+
コア数4コア
スレッド数8スレッド
ベースクロック3.7 GHz
最大ブーストクロック最大 4.2 GHz
L1キャッシュ(命令用)64 KB × 4コア = 256 KB
L1キャッシュ(データ用)32 KB × 4コア = 128 KB
L2キャッシュ512 KB × 4コア = 2 MB
L3キャッシュ(CCD単位)4 MB
3D V-Cache容量
合計L3キャッシュ容量4 MB
TDP65 W
対応ソケットAM4
内蔵GPURadeon RX Vega 11(11CU、最大 1.4 GHz)
  • L1キャッシュの総容量は、384KB(命令用256KB+データ用128KB)。命令用とデータ用は各コア専用で、合計値は全4コアの総和。
  • L3キャッシュ(CCD単位)は、モノリシックCCD構造で4MBが搭載されています。
  • 3D V-Cache容量は、X3Dモデル専用のため非搭載です。

搭載されている機能

Ryzen 5 3400Gは、Zen+アーキテクチャを採用したPicasso世代のAPUとして、エントリークラスながら多彩な機能を備えています。4コア8スレッド構成による基本性能に加え、統合型グラフィックス「Radeon RX Vega 11」を搭載し、外部GPUなしでライトゲーミングや動画編集をこなせるのが大きな特徴です。

さらにPrecision Boost 2やPBO、Pure PowerといったAMD独自の制御技術を搭載し、性能と効率を両立。Unlocked仕様によりオーバークロックも可能で、コストパフォーマンスに優れた柔軟性の高いAPUとして位置づけられます。本セクションでは、その搭載機能を解説していきます。

Simultaneous Multi-Threading(SMT)搭載

Ryzen 5 3400Gは、Simultaneous Multi-Threading(SMT)技術に対応し、1つの物理コアで2つのスレッドを同時に処理できます。これにより4コア構成ながら8スレッドを扱え、マルチタスク性能が大幅に向上。

複数アプリケーションを並行して利用する場面や動画編集・軽量なレンダリング作業などで効率的な処理が可能です。エントリークラスのAPUながらも、スレッドを多用する最新ソフトウェアや日常的なマルチタスク環境で優れた応答性を発揮する点が大きな魅力です。

Precision Boost 2(PB2)搭載

Ryzen 5 3400Gは「Precision Boost 2(PB2)」を搭載し、負荷状況や温度、電力供給をリアルタイムに監視しながらクロック周波数を自動で最適化します。従来のように特定のコアだけを強化するのではなく、利用状況に応じて全コアのクロックを柔軟に調整できるのが特徴です。

これにより、シングルスレッド性能からマルチスレッド処理まで幅広いシーンで高いパフォーマンスを維持。ユーザーが特別な設定を行わなくても、自動的に快適な応答性を確保できる便利な機能です。

Precision Boost Overdrive(PBO)搭載

Ryzen 5 3400Gは、PB2を拡張する「Precision Boost Overdrive(PBO)」に対応しています。これはマザーボードの電力供給や冷却性能に余裕がある場合、通常のブーストクロックを超えて自動的に性能を引き上げる機能です。

手動でのオーバークロックに比べて安定性が高く、環境に合わせて最適な性能を引き出せる点が特徴です。高性能な冷却ソリューションや堅実な電源ユニットと組み合わせれば、Ryzen 5 3400Gのポテンシャルをさらに発揮でき、コストを抑えつつ快適なPC環境を実現できます。

Pure Power 搭載

Ryzen 5 3400Gは「Pure Power」技術を搭載し、電力効率と安定性を両立しています。CPU内部に配置された数百のセンサーが温度・電圧・クロックをリアルタイムで監視し、必要に応じて自動で最適化。

これにより無駄な消費電力を抑え、発熱を低減しながらも必要な性能は維持できます。ユーザーが特別な設定を行う必要はなく、常時機能するため静音性や省エネ性を求める環境に特に有効です。省スペースPCや常時稼働システムにおいても安定動作を支える重要な技術といえます。

Eco Mode(省電力モード)対応

Ryzen 5 3400Gは、Eco Mode(省電力モード)に対応しており、標準のTDP 65Wから45W相当まで抑えて運用できます。Ryzen MasterやBIOS設定を通じて切り替え可能で、静音性や省電力性を重視するユーザーに有効です。

性能は若干低下しますが、発熱の抑制や電力効率の改善により安定性が増し、長時間稼働するPCや小型ケースでの利用に最適です。性能と省エネのバランスを調整できる柔軟性は、エントリークラスながらも3400Gの強みを引き出す重要な要素です。

Unlocked仕様(倍率ロックフリー)

Ryzen 5 3400Gは「Unlocked仕様」を採用しており、倍率ロックが解除されています。これにより、ユーザーはBIOSやAMD公式ツール「Ryzen Master」を用いてクロック倍率を調整し、オーバークロックによって標準以上の性能を引き出すことが可能です。

もちろん安定動作のためには十分な冷却と電力供給が必要ですが、PB2やPBOと組み合わせることで、環境に応じた最適なパフォーマンスを得られます。エントリークラスでありながら、自作ユーザーが自由にチューニングを楽しめる点は大きな魅力です。

AVX2 / FMA3 命令セット対応

Ryzen 5 3400Gは、拡張命令セットのAVX2およびFMA3に対応しています。AVX2は256bit幅での並列演算を可能にし、画像処理やデータ解析など大規模計算に効果を発揮。

一方、FMA3は掛け算と加算を同時に処理できるため、動画エンコードや科学技術シミュレーションにおいて演算効率を向上させます。

これらの命令セットにより、エントリー向けAPUでありながら、高度な数値演算を必要とする作業にも対応可能。コストを抑えつつ幅広い用途に応える点が強みです。

AMD StoreMI Technology 対応

Ryzen 5 3400Gは、ストレージ統合技術「AMD StoreMI」に対応しています。SSDとHDDを組み合わせて1つの仮想ドライブとして扱い、SSDをキャッシュとして利用することでデータアクセスを大幅に高速化。

よく使うアプリやデータは自動的にSSD側に配置されるため、ユーザーは意識せずとも快適な操作性を体感できます。大容量HDDのコストパフォーマンスとSSDの高速性を両立でき、省スペースPCや低予算構成でも優れたレスポンスを実現できるのが魅力です。

Radeon RX Vega 7(iGPU)搭載

Ryzen 5 3400Gは、当時のAPUとしては高性能な「Radeon RX Vega 11」を内蔵しています。11基のCUを搭載し、最大1.4GHzで動作。フルHD解像度でのライトゲーミングや動画編集、マルチメディア用途を外部GPUなしで快適にこなせます。

DirectX 12やVulkanなどの最新APIにも対応し、ハードウェアデコード機能を備えているため、映像再生もスムーズです。コストを抑えたPC構築や省スペースPCに最適で、APUの利点を最大限に活かせるiGPUです。

発覚している相性の問題

Ryzen 5 3400Gは、コストと性能を両立した優秀なAPUとして注目を集めましたが、実際の運用においてはいくつかの相性問題も確認されています。代表的なものは、旧世代マザーボードでのBIOS非対応による起動不良、高クロックメモリ利用時の不安定動作、冷却不足による高温化、そしてドライバーやソフトウェア側の最適化不足などです。

これらはいずれもBIOSの更新、安定したメモリ選定、冷却環境の強化、最新ドライバーの導入によって改善可能です。本セクションでは、Ryzen 5 3400Gで発覚している相性問題とその対策について解説していきます。

マザーボードBIOSとの互換性

Ryzen 5 3400GはZen+アーキテクチャを採用したAPUで、AM4ソケットに対応しています。しかし発売当初、特にA320やB350といった旧世代チップセットのマザーボードでは、BIOSが3400Gに対応していないケースが多く報告されました。

その結果、CPUを装着しても起動しない、あるいは内蔵GPUを正しく認識できないといったトラブルが発生しました。これはAGESAコードの更新不足が原因であり、BIOSを最新バージョンへ更新することで解消可能です。

ただし、BIOS更新には対応CPUが必要になる場合があるため、販売店で「Ryzen 3000G対応済み」と明記された製品を選ぶことが安全策です。また、B450やX470以降のマザーボードでは比較的安定して動作する傾向があり、長期的な安定性を求めるなら新しめのチップセットを選択するのが望ましいでしょう。

メモリ相性

Ryzen 5 3400Gは公式にDDR4-2933までをサポートしていますが、APU特有の性質としてメモリクロックが内蔵GPU性能に直結します。そのため高クロックメモリを利用したいユーザーが多い一方で、当時はマザーボードのBIOSが未成熟であり、DDR4-3200以上での動作が不安定になるケースが多く報告されました。

症状としては、起動時のPOSTエラー、ランダムなフリーズ、ブルースクリーンなどが挙げられます。対策としては、まずBIOSを最新版へ更新すること、次にマザーボードメーカーが公開しているQVL(動作確認済みメモリリスト)に掲載されたメモリを選択することが重要です。

安定性を重視する場合はDDR4-2933の範囲内で運用し、性能を求めるならDDR4-3200以上のOCメモリを試す価値がありますが、安定性検証を行ったうえで使用するのが安全です。

発熱と冷却環境

Ryzen 5 3400GはTDP 65W設計ですが、CPUとGPUを同時に高負荷で使用すると消費電力が実際には80W前後に達することがあります。その場合、付属のWraith Spireクーラーでは冷却が不十分となり、高負荷時に温度が80度を超えてクロック低下を招くケースが確認されました。

特に小型ケースでの運用時はエアフロー不足により熱がこもりやすく、安定性に影響を及ぼす可能性があります。対策としては、まずケース内のエアフロー改善が必須であり、可能であればより冷却性能の高い空冷クーラーや簡易水冷の導入を検討すべきです。

また、Ryzen Masterを利用して軽度のアンダーボルティングを行えば、性能を維持しつつ発熱を抑制できます。長時間の高負荷作業を安定してこなすためには、冷却環境の強化が実質的に必須といえるでしょう。

Windowsやソフトウェア側の最適化

Ryzen 5 3400GはCPUとGPUを統合したAPUという特性上、ソフトウェア環境の最適化も重要です。発売当初は内蔵GPU用のドライバーが未成熟であり、特定のゲームやアプリケーションで描画の不具合やクラッシュが報告されました。

また、Windows側のスケジューラーがマルチスレッド処理を最適化できず、性能を十分に発揮できないケースも存在しました。対策としては、AMD公式サイトから最新のチップセットドライバーとRadeonソフトウェアを導入することが第一です。

さらに、Windows Updateを適用し、電源プランを「Ryzen Balanced」に設定することで、クロック制御やスレッド割り当てが最適化されます。アプリケーション側でも最新バージョンを利用することで、GPUアクセラレーションやマルチスレッド最適化が正しく機能し、3400Gの性能を最大限に発揮できるようになります。

総まとめ

Ryzen 5 3400Gは、Zen+アーキテクチャを採用した「Picasso」世代を代表するAPUとして登場し、4コア8スレッド構成とRadeon RX Vega 11を組み合わせた高いバランス性能を実現しました。グラフィックボードを必要としないライトゲーミングや動画編集を可能にし、省スペースPCやコスト重視のシステム構築に適した存在として当時大きな注目を集めました。

また、DDR4-2933メモリを公式サポートすることで内蔵GPU性能を強化でき、AM4プラットフォームとの広い互換性も相まって、多様なユーザー層に対応できる柔軟性を備えていました。

一方で、旧世代マザーボードでのBIOS非対応や高クロックメモリ使用時の不安定動作、冷却不足による温度上昇など、いくつかの相性問題も確認されています。しかし、最新BIOSの導入や安定したメモリ選定、冷却環境の強化といった基本的な対策を行うことで、安定した動作が可能です。

Ryzen 5 3400Gは、コストと性能を両立したエントリー向けAPUとして、現在でも中古市場や低予算構成において一定の価値を持つ1基です。グラフィックス性能を兼ね備えた万能型CPUとして、Ryzen世代の歩みを支えた重要なモデルといえるでしょう。

https://amzn.to/45Ouvje