どうもジサ郎です。
AMD製CPUを支える技術、「Promontory」とは?全容に迫っていきたいと思います。
Promontoryとは?
Promontory(プロモントリー)とは、AMDが2017年のRyzen登場と同時に導入したI/Oチップセット用プラットフォームのコードネームです。 ASMedia社と共同開発されたこの技術は、X370〜X570、A320〜B550といったAM4チップセットの大多数に搭載されており、AM4プラットフォーム成功の基盤となりました。
特徴的なのは、Promontoryは1種類ではなく、内部的に複数のリビジョン(1〜21など)に分かれて進化してきたことです。
歴史と進化の系譜
バージョンごとの主な進化ポイント
バージョン | 採用チップセット | 製造元 | 主な特徴・進化内容 |
---|---|---|---|
Promontory 1 | A320 / B350 / X370 | ASMedia | 初期版。PCIe 2.0ベース。USB 3.1 Gen1対応 |
Promontory 2 | B450 / X470 | ASMedia | 信号品質改善、VRM・USB制御の強化 |
Promontory 3 | X570(旧) | AMD(自社) | PCIe 4.0初対応。高発熱によりチップセットファン搭載 |
Promontory 12 | B450(後期モデル) | ASMedia | 電力効率改善モデル。低発熱・安定性向上 |
Promontory 14 | OEM B450(Lenovo等) | ASMedia | Ryzen 5000シリーズを意識したマイナーバージョン |
Promontory 17 | 一部X470/B450改良版 | ASMedia | セキュリティ対応(PSPファーム)、ブート安定性向上 |
Promontory 21 | B550 / A520 | ASMedia | CPU側のみPCIe 4.0。チップセットはPCIe 3.0対応でファンレス設計へ |
なぜバージョンが多いのか?
Promontoryは以下の目的で段階的に改良・分化されてきました。
- CPU世代(Zen〜Zen3)への適応
- BIOS/AGESA対応(Ryzen 5000など)
- 省電力・静音性の向上
- PSP(セキュアプロセッサ)との連携強化
- OEM製品向けの最適化(Lenovo等)
Promontoryの技術的特徴
強み
- コスト効率の良さ:ASMediaによるOEM供給でローコストなAM4環境を実現
- 柔軟なI/O設計:PCIe/SATA/USBの組み合わせを製品ごとに調整可能
- 長寿命サポート:第1世代〜第5世代Ryzenまで幅広い互換性を確保
弱み・課題
- チップセット間帯域が狭い(PCIe 2.0 x4〜3.0 x4)→ I/O競合の原因に
- 高発熱モデルあり(特にX570はファン必須)
- バージョンによる挙動差:Ryzen 5000非対応/BIOS更新不能な製品も一部存在
ASMedia Technology Inc.とは?
「Promontory」の開発に携わってきた「ASMedia」とはどういう会社なのか?
ASMedia Technology Inc.(エーエス・メディア テクノロジー)は、台湾・新北市に本社を構える半導体ファブレス企業で、2004年に設立されました。
主にUSBホストコントローラ、PCI Expressブリッジ、SATAコントローラといったI/O関連チップの設計開発に特化しており、ASUS(本社)傘下のグループ企業としても知られています。
主な特徴
- マザーボードを開発しているASUS(本社)の傘下企業
- USB 3.0/3.1/3.2対応の汎用ホストコントローラICで高いシェア
- SATA/PCIeブリッジチップを多くのマザーボードベンダーに供給
- AMDと長期的な提携関係にあり、Promontoryチップセットを共同開発
AMDとの関係
ASMediaは、初代Promontory(X370/B350/A320)〜Promontory 21(B550/A520)までの多くのチップセットの実設計を担当しています。 一方、X570ではAMDが自社でPromontory 3を開発したため、ASMedia製ではなくなりました。
このASMediaとの連携により、AMDはコストを抑えつつも高いI/O柔軟性を備えたAM4マザーボードを展開できたとされています。
※ Linuxなどのハードウェア情報表示ツールでは、「ASMedia 1142」「ASMedia 1061」などのコントローラ名が表示されることがあり、それらも同社の製品です。
ユーザーが気をつけるべき点
- 同じ「B450」でもPromontoryのバージョン違いで対応CPUが変わる可能性あり
- BIOS更新の可否はマザーボードとPromontoryの組み合わせに依存
- 最新Ryzen CPUを使いたい場合は、マザーボードの対応表を必ず確認すること!
まとめ
Promontoryは、「名前は知られていないが、AMD AM4プラットフォームを成功へ導いた核技術」です。 内部には多くの進化があり、それぞれが世代間の互換性と安定性を担ってきました。
これからはAM5や新世代のI/Oコントローラーへ移行していきますが、Promontoryが築いた土台の上に、今のRyzenの信頼性と普及があることは間違いありません。
ASUSがマザーボードに強い理由が、「ASMedia社」にありそうなのは気のせいでしょうか・・・?