Ryzenの「X3Dシリーズ」などに搭載されている3D V-Cache(スリーディーヴィーキャッシュ)。この技術は、従来のCPUとは異なる方法でL3キャッシュを増量することで、ゲーム性能を大幅に向上させる革新的な仕組みです。
この記事では、初心者にもわかりやすく、3D V-Cacheの概要や搭載CPU、仕組み、メリット・デメリットなどを解説します。
3D V-Cacheとは?

3D V-Cacheは、AMDが開発したL3キャッシュを「垂直方向に積層(3D化)する」技術です。
通常、CPUのキャッシュ(L1~L3)は、チップ内「平面的に配置されており、容量には限界があります。しかし、3D V-CacheではL3キャッシュの一部を物理的に重ねることで、より多くのキャッシュを同一パッケージ内に搭載できるようになります。
その結果、以下のようなメリットが得られます。
- メモリアクセスの遅延が減少
- キャッシュヒット率の向上
- 特にゲームなどでフレームレート(fps)が安定・向上
L3キャッシュについては、下記の記事で解説しております。
なぜゲーム性能が上がるのか?
通常キャッシュと3D V-Cacheのイメージ
※実際の構造はさらに複雑ですが、概念的には以下のように「物理的に積むことでキャッシュ容量を増加」させています。

多くのPCゲームは、CPUのL3キャッシュへの依存度が高い設計になっています。ゲーム内のオブジェクト管理、AI制御、物理演算などが頻繁にキャッシュを読み書きするからです。
3D V-Cacheでは、このL3キャッシュの容量が大幅に拡張されるため、ゲーム処理に必要なデータをより多くキャッシュ内に保持でき、メモリへアクセスする回数を減らせるのです。
3D V-Cacheが搭載されているCPU一覧
モデル名 | L3キャッシュ容量 | コア数 / スレッド数 | 世代 |
---|---|---|---|
Ryzen 9 9950X3D | 192MB | 16C / 32T | Zen 5 |
Ryzen 7 9800X3D | 192MB | 8C / 16T | Zen 5 |
Ryzen 9 7950X3D | 144MB | 16C / 32T | Zen 4 |
Ryzen 9 7900X3D | 140MB | 12C / 24T | Zen 4 |
Ryzen 7 7800X3D | 96MB | 8C / 16T | Zen 4 |
Ryzen 7 5800X3D | 96MB | 8C / 16T | Zen 3 |
メリットとデメリット
メリット
- ゲームfpsが向上しやすい(CPUボトルネックを緩和)
- メモリ依存が下がるため安定動作に寄与
- キャッシュヒット率が高くなる → レイテンシ改善
- GPU性能を引き出しやすくなる(特にRTX40番台などと好相性)
デメリット
- 一部の作業(動画編集・レンダリング)では通常モデルと性能差が少ない(※PC Watch検証)
- 価格が高めに設定される傾向がある
- 発熱がやや大きく、冷却設計に注意が必要(PBO制限あり)
BIOS設定とOC制限の注意点
3D V-Cache搭載CPUにはPBOや手動OCに制限があるモデルが多いため、以下のような点に注意してください。
設定項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
Precision Boost Overdrive(PBO) | 一部X3Dモデルで無効化されている | 例:5800X3Dでは不可 |
手動オーバークロック | ほぼ全モデルで非対応/制限あり | 保証対象外になる場合もあり |
BIOSバージョン | AGESA更新済みが必要 | 古いBIOSでは起動しない |
EXPO/XMP | メモリ周波数設定は可能 | DDR5との互換性に注意 |
まとめ
3D V-Cache搭載Ryzenは、「もう少しfpsが伸びないかな…」と感じているあなたのCPUボトルネックを解決する、ゲーム特化型の強力な武器になります。
Ryzenを深く知るには、こうしたアーキテクチャごとの機能を理解することが近道です。